コラム

遺留分制度の見直し(改正相続法)について


昨年の“遺留分制度の見直し”に伴い遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対しその侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになりました。従来の仕組みでは、遺留分減殺請求(現行:遺留分侵害額請求)が行われると、相続財産は遺贈や贈与を受けた者の“単独所有”の状態から遺留分を侵害された者との“共有”状態に移行していました。相続財産が不動産であれば持分割合による複雑な共有状態が生じ、不動産の有効活用や事業承継などの面で支障をきたしていました。

事例

相続財産 ⇒ 不動産(自宅兼会社)8,000万円、預貯金2,000万円
被相続人 ⇒ 事業経営者の父
相続人  ⇒ 子2人(長男・長女)

◎事業経営者の父は、事業承継者の長男に不動産8,000万円、長女に預貯金2,000万円を相続させる旨の遺言を残し亡くなった。

長女の遺留分侵害額
{(8,000万円+2,000万円)×1/2×1/2}-2,000万円=500万円

長女が遺留分減殺請求(現行:遺留分侵害額請求)権を行使

【従来の制度】
不動産について、長男15/16(7,500万円/8,000万円)、長女1/16(500万円/8,000万円)の持分共有状態が当然に発生。

【現行の制度(2019年7月~)】
長女は長男に対し500万円の金銭債権を有することになります。したがって、不動産は遺言者(亡き父)の意思どおりに長男の単独所有が維持されます。なお、遺贈や贈与を受けた者(長男)が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し支払期限の猶予を求めることができます。