コラム

人が亡くなると、どのタイミングで預金が凍結するの?

この答えを誤解されている方が多く、またネット上にも不正確な情報が散見されます。そこで現場から、実際の所をお伝えしたいと思います。(既に金融機関を退職していますが、、、)

正解 金融機関が預金者の死亡を“知ったとき”に凍結※します。

※凍結:普通預金の入出金、定期預金の自動継続など原則すべての取引がストップします。(投資信託の分配金入金など一部例外あり)なお、相続財産としての預貯金評価額は凍結時の残高ではなく死亡日に解約していたら受け取ることができた金額になります。

預貯金評価額=死亡日の預貯金残高+既経過利息※-源泉分離課税相当額
※既経過利息は約定利率ではなく、死亡日の期限前解約利率を適用して計算します。

預金通帳

誤解No.1 区役所など行政機関からの連絡を受けて凍結する。

人が亡くなるとご家族は行政機関へ「死亡届」を提出します。そのため、このような誤解を生じますが、行政機関が死亡者の情報を金融機関に知らせることはありません。

誤解No.2 ご家族の“依頼”に基づき凍結する。

窓口でご家族から、「預金者が亡くなったのですが、振込入金や口座引落しの関係で来月から止めてください」などと“依頼”を受けることがあります。しかしながらこのような場合、“依頼”の時点で預金は凍結されます。つまり、凍結は“依頼”の内容とは無関係で“死亡を知ったとき”に行われるものなのです。

どうやって死亡を知るの?
  • ご家族、ご近所から聞く。
  • 新聞のお悔やみ欄を見る。(毎日、くまなく見ています)
  • 葬儀場の掲示板などでたまたま知る。
  • 生前の勤務先、お知り合いなどを通じてたまたま知る。

ここまで読むとお分かりいただけたかと思いますが、凍結タイミングは意図的にコントロールできるものではありません。そのため、万一のときに慌てずに済むように対策を考えておく必要があります。

主な生前対策
  • 遺言書を作成する。

公正証書遺言などがあれば遺言執行者が簡便かつスムーズに相続手続き(預貯金の解約・名義変更など)を行うことができます。個人的には、本年7月10日から始まる“自筆証書遺言保管制度”における“遺言書情報証明書”(こちらをご参照ください)にも同様の効果を期待しており、各金融機関においては内部マニュアルの更新と同時に窓口担当者、できれば顧客への周知なども行って欲しいと思っています。

  • 保険商品を活用する。

生命保険の受取人が被保険者の死亡に伴い保険金を請求する手続きは、相続手続きに比べるとはるかに簡便です。

  • 法定相続人の連絡先を調べておく。

預金者の死亡後に連絡が取れない法定相続人の存在が判明し、遺産分割協議が進まなくなる場合があります。最低限、法定相続人の特定(戸籍調査)と連絡先の確認はしておくべきと思います。

  • 預金口座を整理する。

当然ながら、口座数が少ない方が相続手続きの負担は少なくなります。

相続発生後の対策
相続発生後の預貯金の引き出しには下記リスクを伴いますので充分ご注意ください。
  • 相続放棄できなくなる。

相続財産の一部に個人的事情で手を付けてしまうと相続を単純承認したとみなされ、後に資産を上回る負債が判明したとしても、もはや相続放棄が認められない可能性があります。

  • “争族”の火種になる。

預貯金は遺言書がなければ遺産分割協議の対象となる相続財産です。したがって、預貯金の引出し(相続財産を減らす行為)は止むを得ぬ事情があったとしても法定相続人の総意に基づくものでなければなりません。遺産分割協議時に仲良しきょうだいがお互いの疑心暗鬼から不仲になってしまったということはよくある話です。相続手続きに関しては充分慎重に、できれば専門家などに相談されながら進めていくことをお勧めします。