コラム

暦年贈与(相続対策)について

相続対策のひとつに暦年贈与があります。
現役世代への円滑な資産移転や相続税の負担軽減などを目的として行われます。

暦年贈与では、贈与税の基礎控除(受贈者1人ずつ年間110万円)の範囲内、または相続税の支払いが見込まれる場合ついては相続税の適用税率よりも贈与税の適用税率が低くなるように生前贈与を行います。

【事例】

  • 推定相続人:子1人
  • 相続財産:1億5千万円
  • その他:相続開始3年以内の贈与なし、相続以外の課税所得なし

〇生前贈与をしなかった場合の相続税(相続財産1億5千万円)
相続税=2,860万円⋯①

〇生前贈与を毎年110万円10年間した場合(相続財産1億3,900万円、贈与財産1,100万円)
相続税=2,420万円⋯② 軽減額(①-②)=440万円

〇生前贈与を毎年310万円10年間した場合(相続財産1億1,900万円、贈与財産3,100万円)
相続税+贈与税=1,790万円+200万円=1,990万円⋯③ 軽減額(①-③)=870万円

上記事例のように生前贈与をするとしないとでは相続税の負担が大きく異なります。なお、暦年贈与には注意点もあります。

【注意点】

  • 相続開始前3年以内の贈与については相続税を計算する際、その贈与財産を相続財産に加算するルールがあり、相続税の対象となります。(一代超えて孫に贈与した場合、このルールは適用されません)
  • 通帳、届出印の管理は受贈者が行ってください。
    《理由》
    贈与者が保管していると名義預金(贈与者が真の預金者であり、受贈者の名前を借りているだけの預金)とみなされ、相続税の対象となる可能性があります。
  • 毎年、贈与契約書を作成してください。
    《理由》
    贈与契約書がないと定期贈与とみなされる可能性があります。定期贈与とは、例えば110万円を10年間にわたって贈与した場合、最初から1,100万円を贈与するつもりだったとする考え方です。この場合、1,100万円全額が贈与税の課税対象(基礎控除110万円のみ)となります。

こうも注意点が多いと、なかなか重たい腰が上がらないのではないでしょうか?ご自身で暦年贈与を管理することが困難な場合は、銀行の贈与信託や生命保険会社、証券会社の専用商品を利用する方法があります。これらの利用には相応の手数料はかかりますが、贈与契約書の作成、贈与金の振込など面倒なことから解放され、安心して生前贈与を行うことができます。

また、既存の生命保険商品を活用することで実に多様な相続対策が可能です。人それぞれの状況に応じて適不適な相続対策がありますので、詳しい人(金融機関のFPなど)に相談されるとよろしいかと存じます。

暦年贈与
どのような相続対策が必要なのか、まずは贈与者と受贈者の間でしっかり話し合われることも大切だと思います。