コラム

預貯金の一部払戻し制度(改正相続法)について

約40年ぶりに大改正された相続法が昨年1月より段階的に施行中です。今回は改正に伴い昨年7月に設けられた預貯金の払戻し制度を振り返りたいと思います。
改正前は一旦預貯金口座が凍結されてしまうと、遺産分割協議を終えた後でなければ原則払戻しができませんでした。具体的には、金融機関に提出する相続手続き依頼書に法定相続人全員の署名捺印が必要でした。そのため、遺産分割協議がまとまらない場合や相続人の一人となかなか連絡が取れないような場合には、“葬儀代が支払えない”、“生活費を捻出できない”といった困った事態を招いていました。そこで、改正相続法では“一部払戻し”を可能にする下記2つの制度が創設されました。

家庭裁判所の判断により払戻しができる制度

家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が現に申し立てられていることを前提に、各相続人から家庭裁判所へ預貯金の一部払戻しについて申し立て、その審判を経ることにより認められた金額を払戻すことができます。

家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度

各相続人が直接、故人の取引金融機関を訪ね、以下の計算式で求めた額を単独で払戻しを受けることができます。
相続開始時の預貯金の額(口座単位)×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
(ただし、1つの金融機関の上限150万円)

遺産分割協議がなかなか進まないといったケースは決して珍しいことではありません。家庭裁判所を通さない後述の制度は余分な費用をかけずに迅速な払戻しが可能であり、利便性が特に高い制度と言えます。