コラム
賃金のデジタル払い(令和5年4月から可能に!)
令和4年11月下旬、労働基準法施行規則の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第158号)が公布され、いわゆる「賃金のデジタル払い」が可能になりました。令和5年4月1日から施行されます。
改正内容は、賃金の振込先として新たに資金移動業者の口座を加えるというものです。資金移動業者とは、銀行以外で送金サービスができる登録事業者のことで、2022年12月31日現在、83社あります。「paypay」や「楽天ペイ」などと聞くとイメージしやすいのではないでしょうか?
労働基準法では、給与は通貨(現金)で払うことが原則とされていましたが、時代の変遷に伴って1975年からは銀行口座へ、1998年からは証券総合口座への振り込みが認められるようになりました。今回の改正で、給与振り込みが可能な口座がさらに増えることになります。
給与振込口座となる賃金移動業者には下記のような要件が必要になり、これを満たして申請された中から、厚生労働大臣が指定します。
- 口座残高が100万円を超えた場合は速やかに100万円以下にするための措置を講じていること(紐づけされた銀行口座へ送金される仕組みなど)
- 破綻などにより口座残高の受け取りが困難になったとき、保証できる仕組みがあること
- 少なくとも月1回は手数料無料で現金を引き出せること
キャッシュレス化促進へ向けて、安全性を意識した改正内容となっていますが、いろいろな厳しい条件があり、4月1日の申請開始まで参入業者の数も不透明です。
労働者は、賃金のデジタル払いを選択すれば、現金でチャージすることなくキャッシュレス決済が可能になり、利便性の向上が見込まれます。
企業側は、デジタル払いにすることによって、これまでかかっていた銀行口座への振込手数料を削減することができるようになりますが、労働者の同意が必要になり強制することはできません。そのため、これまで通りの銀行口座への支払いと、デジタル払いの双方に対応することが求められ、事務負担は大きくなります。
賃金のデジタル払いは強制ではなく、あくまで選択肢の1つです。企業側は制度のメリット・デメリットを見極めて選択する必要があるでしょう。実施にあたっての細かな要件などについては、お気軽にお尋ねください。