コラム

消滅時効期間の見直し(改正債権法)について


2017年5月に成立した“民法の一部を改正する法律”が2020年4月1日から施行されます。民法のうち債権法に関しては、1896年(明治29年)に制定されてから約120年間にわたり実質的な見直しが行われていませんでした。今回の改正では、①社会経済の変化への対応、②現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを法律の条文において明文化することに主眼が置かれています。今回は、数ある改正点の中で特に身近な問題である“消滅時効”※を取り上げています。
※“消滅時効”とは、債権者が一定期間権利を行使しないことによって債権が消滅する制度です。

【現行の消滅時効期間】
・原則:10年
・別途、下表のとおり職業別の短期消滅時効期間あり。

医師の診療報酬3年
弁護士の報酬2年
飲食代金1年
動産のレンタル代金1年
商取引債権5年

 

【改正後の消滅時効期間】
・原則:5年
・例外:自分が権利を行使できることを知らないような債権(過払金返還債権を有するにかかわらず、過払い時点では過払いした認識がない場合など)については、権利を行使することができる時から「10年」。

なお、消滅時効期間の起算日(スタート)は貸し借りした時ではありませんのでご注意ください。最後の返済があった時、債務者が返済猶予を求めた時、あるいは裁判上の請求や差し押さえがあればその時からリスタートします。また、5年ないし10年が経過しても債務者が消滅時効を主張(時効の援用)するまで債権が消滅しない点にも注意が必要です。逆に言えば、債務者の返済する権利は消滅時効期間の経過のみによって奪われることはありません。